タダ友S・Dとの交錯
そいつはいつも暗がりを好む、というと変な表現かもしれないけれど、本人曰く、
「もう慣れたからしょうがない。」
らしい。黒が大好きだと公言しているだけあって、常に黒を基調とした格好をする。
「お前は本当に服のセンスがないようだな。」
ほっとけ、といいながらも内心では同意し焦っている・・・が、そんなことは口が裂けても言えない。言いたくない。
「早いなぁ、もう知り合って六年か。」
「そうだな。早いもんだ。」
S・Dは冷たく凍えた手を揉み、自慢の黒いコートのポケットに突き刺した。
「それで、最近はどうなんだ?」
「どう、って?」
「どうとは「どう」だろ。」
「どう・・・っていってもなぁ。」
しばらく頬を右手で擦りながら考えていると、
「お前、痩せた?」
「らしい。分からん。」
しかし本当に寒い。温かい缶コーヒーでも買うか、と注文を聞くと、
「俺さぁ、病気かもしんねぇ。」
え、と言って振り向いた。暗い公園には街灯が一本しかなく、寂しい明かりが公園を取り囲むように、ぱらぱらと生えている樹木を薄く包んでいた。
ベンチから腰を浮かせたまま、S・Dの顔を見ようとした。S・Dは両手を黒いコートに入れたまま、正面の水道をじっと見つめている。こちらを見ようともしない。
「どこの?」
「消化器系。あ、俺無糖で。」
消化器系が悪い奴がコーヒーを飲んでもいいのかと言いかけたが、やめた。
買って戻ると、
「いやぁ、どう思う?」
「だから何が?」
カシッ、と缶を開けたS・Dに続けて缶を開けて聞き返す。
「容疑者Xの献身。」
「実におもしろい。」
「なぁ。」
コーヒーを一滴も残さず飲み干したS・Dは、しばらく缶をじっと見つめた。
「きちんと消化してくださーい。寒いとつらいでーす。」
ぽんぽんと腹を叩いて、缶を鉄網のくず入れに投げた。
カッ!缶はくず入れ側面へりにあたり、落ちた。
「あ~ぁ。」
へらへら笑いながら拾いに行くS・Dの尻目掛けて缶を投げた。
「あ!てめ、コートが!」
「一滴残らず飲み干しましたであります!」
くそう、と二つの缶を拾いながら、
「最後の慟哭はさ、「美しい」「愛」に気付いたためか、「美しい」「愛」が完遂できなかったためか、どっちだと思う?」
「後者。「愛」を知った当初はそのものの「美しさ」に惹かれたものの、犯行を組み立てた段階で「美し」くあるための「愛」へと変わったから。で、なければ「天才」とは呼べない。」
「なるほど。」
缶を捨てながら、
「ほいじゃぁな、そろそろ戻りますわ。」
「はいよ。おつかれさん。」
そのまま公園の外に歩いていった。
公園の横には一台の黒いバイクが止まっていた。
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